ごあいさつ
2019年、兵庫県立総合リハビリテーションセンターは50周年を迎えることができました。兵庫県知事はじめ多くの関係者の皆様に感謝申し上げます。私の師匠である澤村誠志先生が、当時としては極めて先進的な考えであった「障害者の自立と社会参加」という理念を実現すべく、兵庫県の絶大な支援を受けてセンターを設立しました。早いもので50年の歳月が過ぎ、まだまだ十分とは言えませんが、「障害者の自立と社会参加」といった概念は一般的なものとなり、社会全体の方向性として捉えられているものと思います。この過程において、当センターが社会に果たした役割は極めて重要であったと確信しています。我々はセンターのこれまでの歩みと伝統を忘れることなく、次の10年、20年、50年に向けて踏み出さねばなりません。そのためには、従来の延長線上で物事を考えるのではなく、未来志向の発想で、バックキャスト的にこれから我々が成すべき役割を真剣に考え、創造していく必要があります。
日本は今、世界が経験したことがないような超高齢社会に直面しています。人生100年時代と言われる今、「障害と高齢」はもはや別ものではなく、むしろ一体として考えていかなければならない時代となったと考えます。私が考える当センターの今後の果たすべき重要な役割の一つは「障害と高齢」に関る課題に取り組み、克服することです。WHOも人類が21世紀に立ち向かうべき課題として「障害と高齢」を挙げており、その解決の手段としてAssistive Health Technology(いわゆるロボットテクノロジーであり、決してハイテクのみをさすものではない)を掲げています。このような世界の潮流を踏まえると、我々はAI(人工知能)やIoT(Internet of Things)、ロボットテクノロジーともはや無縁ではいられません。これらの手段を効果的に駆使して、課題解決に取り組むことが求められます。そのような意味において、当センター内の施設である福祉のまちづくり研究所の果たす役割は今後ますます重要となってくることでしょう。
50周年を迎えた当センターの合言葉は「From Here」です。私はこの合言葉を三つの視点で理解しています。時間・空間・質(レベル)の視点です。つまり、10年、20年、50年後といった未来を見据えて行動すること、そしてここ兵庫県立総合リハビリテーションから全国、世界に発信していくこと、そして現状のレベルに満足することなくさらに進化し続けること、に他なりません。このような高い意識を持ってセンター全体で歩みを進めていくことによって、当センターはトップランナーとしての存在を確固たるものにできると思います。
これからも県民の皆様に「兵庫県にセンターがあって良かった」と思われるような取り組みを続けて参ります。