リウマチ科

当科では関節リウマチを中心とするリウマチ性疾患、膠原病に対して診断から、治療全般において専門的診療をおこなっている。薬物療法を主体とし、必要に応じて手術療法、入院リハビリ加療を行っている。また、疾患についての教育目的のため、患者と家族向けに教室を開催しており、きめ細やかな治療を目指している。

主な疾患

関節リウマチが大部分ですが、リウマチ性多発筋痛症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、混合性結合組織病、血管炎症候群、脊椎関節炎、乾癬性関節炎、痛風、偽痛風などの鑑別診断、診療をおこなってます。

スタッフ紹介

氏名 役職 卒業年次 専門医資格など 専門領域
北川 篤
  • リウマチ科部長
  • 整形外科部長(兼務)
平成7年
  • 日本整形外科学会認定整形外科専門医・脊椎脊髄病医
  • 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医
  • 日本リウマチ学会登録ソノグラファー
  • 神戸大学連携大学院講座臨床准教授
  • 関節リウマチ
  • 関節外科
中村 知子
【非常勤】
  • リウマチ科医師
昭和59年
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本神経学会認定神経内科専門医
  • 日本老年医学会認定老年病専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科認定臨床医
  • 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医
  • 日本リウマチ財団登録医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医
  • 関節リウマチ
  • 膠原病
山本 航大
【非常勤】
  • リウマチ科医師
平成29年
  • リウマチ一般
山下 真依
【非常勤】
  • リウマチ科医師
平成27年
  • リウマチ一般

リウマチ科の紹介

外来

関節リウマチの治療に関しては、今までどんな薬を使ったか、またその薬の効果や副作用がどうであったか等が非常に大切です。いままでの治療歴のある方はできるだけ紹介状のご持参をお勧めします。紹介状がない場合でも、今服用している薬や、以前服用していた薬の記録等を持参いただきますと非常に助かります。

入院

関節リウマチの患者さんで、1)関節や腱等の手術が必要となった場合、2)入院の上治療薬を決めなければならない状態の場合、3)抗サイトカイン療法(トピックスでご紹介しています)の導入で入院が必要な場合には内科病棟、または整形外科病棟に入院していただくことがあります。

リウマチ教室のご案内

外来および入院中の関節リウマチの患者さんおよびご家族の方を対象にリウマチ教室を年3シリーズ行っています。1シリーズは4回で、1回約1時間~1時間半程度です。1週目は医師、2週目は薬剤師、3週目は理学療法士および作業療法士、4週目はケースワーカー、保健師、看護師が中心になって、それぞれリウマチの治療、薬剤、リハビリテーション、医療福祉制度、看護介護等についてお話しています。詳しくはリウマチ科医師、外来および病棟看護師等にお尋ねください。

リウマチテキストのご案内

当院では関節リウマチの患者さんのためにリウマチテキストを作成しております。リウマチ教室に参加された方には配布していますが、ご希望の患者さんは診察時に医師にお申し出ください。

関節リウマチとは?

関節リウマチは関節の炎症が全身にひろがり慢性的に経過する病気です。
20歳から40歳代のひとにかかりやすく、1対4で女性に多い病気です。全国で約70万~80万人の患者さんがいるとされています。

原因と誘因

免疫反応とは、細菌やウイルスなど自分以外の侵入者にたいしてはたらく防御機構なのですが、この機構に異常をきたすと自己の免疫システムが自分の体の一部に対して攻撃おこしてしまうことがあります。このように自己の免疫機構が自分の体に対して攻撃を起こすことが原因の病気でおきる病気を自己免疫疾患といいます。関節リウマチも自己免疫疾患のひとつです。原因は不明ですが、おそらく、体質的に免疫異常を起こしやすい体質がもともとあって、その上に細菌やウイルスの感染、妊娠や出産、ストレスなどのいろいろな環境因子が加わって、免疫機構に異常をきたし、関節リウマチが発症すると考えられています。遺伝的因子として、これまでに100以上の疾患の発症に関わる遺伝子が明らかになっており、環境因子として喫煙や歯周病が関与しています。

関節リウマチの関節でおこること(関節炎について)

関節は骨と骨のつながったところです。関節の部分では骨は軟骨でおおわれていて、関節嚢とよばれる袋が全体を包み込んでいます。この袋のなかは関節液とよばれる液体でみたされており、袋の内側は、滑膜とよばれる膜で裏打ちされています。慢性関節リウマチはこの滑膜に炎症をおこします

炎症というのは、白血球などの炎症細胞が集まってきて、細胞から出るサイトカインと呼ばれる化学物質の働きなどで、まわりの毛細血管をひらき(これにより局所に熱感がおこり周囲に腫れがでます)、さらに炎症細胞が増えるという一連の過程です。炎症の結果、滑膜は厚く増殖し関節液が増えます(これが慢性関節リウマチの関節の腫れです)。さらに厚く増殖した滑膜は骨や軟骨を破壊します。これが関節破壊です。軟骨の破壊によりレントゲンでみた骨と骨の間が狭くなり、さらに進行すると骨の破壊がおこります。

関節の症状

こわばり
滑膜の炎症の結果、周囲の皮下組織にむくみが生じた状態で朝起きたときなど、動作がぎこちない、動かしにくいという感じです。つまり朝のこわばりは夜間の滑膜の炎症の程度を反映しているのです。朝だけではなく長時間関節を動かさないでいるとまわりの皮下組織の血液循環が悪くなるために同じ状態がおこります。動かしたり暖めたりしているうちに自然に楽になってきます。
関節の痛みと腫れ
関節が腫れて痛みます。手や足の指からはじまり手首や足首、膝、肘、肩へと左右対称的にひろがる事が多く、はじめは一ケ所でもだんだんと数が増えてきます。
関節の変形と筋力の低下
関節炎が進行し関節破壊がおきると、特有の関節変形がおこります。また関節炎のある関節の周りの筋肉を使わなくなり筋力が落ちます。

関節外症状

慢性関節リウマチは、その原因が免疫異常であるため、関節の症状以外にもさまざまな症状があらわれることがあります。微熱、疲れやすい(易疲労感)、リンパ節が腫れる、皮下結節(リウマチ結節)、貧血、皮膚の潰瘍、肺病変(胸膜炎、間質性肺炎など)、心膜炎、目の強膜炎(目の充血などで気づかれます)手足のしびれや筋力低下(末梢神経の障害でおきます)といった症状があります。このような関節以外の体の症状を関節外症状といいます。慢性関節リウマチの患者さんの70%以上はなんらかの関節外症状があるといわれています。 関節外症状の中には倦怠感のように患者さんの多くが経験されるものもから、稀なものまでありますが自分の体に何か異常を見つけたときには主治医に相談してください。

病気の経過と予後(見通し)

関節リウマチにはいろいろなタイプがあり、患者さんによって関節炎のおこる関節も程度もさまざまですが、ほとんどの方が良くなったり悪くなったりしながら慢性進行性に経過します。病気が進むと関節の破壊がおこり、次第に全身の動きが不自由になります。早期に適切な治療をうけるかどうか、さらに副作用なく治療を続けられるかどうかによって経過も予後もちがってきます。ひと昔前には、関節破壊をくい止める薬がないのが実情で、リウマチはいずれ日常生活動作に支障をきたす病気というイメージがありました。しかしリウマチ治療薬はここ数年の間にめざましい進歩があり、効力の強い薬がつぎつぎ開発されました。現在のリウマチ治療の目標は、関節破壊を食い止めること、したがっていつまでも使える関節をめざすことにあります。関節リウマチという診断を受けたからといって、あきらめたり、怖がったりせずに、適切な治療を早期に行うことが最も大切なことです。

関節リウマチの治療について

薬物療法

治療の基本は薬物療法です。関節リウマチの治療薬には鎮痛のための薬と疾患自体を是正する抗リウマチ薬があります。かつては関節を安静に保ち、非ステロイド性抗炎症薬、グルココルチコイド、次いで抗リウマチ薬、効果不十分であればほかの薬剤に変更、と段階的に治療していました。近年は早期より積極的かつ強力に抗リウマチ薬によって治療を開始し、寛解を達成することを治療の目標としております。

非ステロイド性消炎鎮痛剤
いわゆる痛み止めといわれるお薬で数多くの種類があります。関節リウマチでは、主に鎮痛効果を期待して使用しますが、関節リウマチに対する免疫異常是正作用や関節破壊抑制作用は証明されていません。抗リウマチ薬の補助薬として使用し、単独で使用することはほとんどありません。
グルココルチコイド
一般的にはステロイドと呼称されており、免疫抑制作用と抗炎症作用をもつ薬です。効果が強く、早く効き、鎮痛効果も高く、非常に症状が楽になる薬です。しかし2つほど問題点もあります。1つは副作用が多いこと、もう1つは、ステロイドだけでは長い目で見ると、関節リウマチの予後をあまり改善させないことが多いことです。したがって、特別な理由がなければ、抗リウマチ剤と併用し、関節炎が落ち着けば、できるだけ短期間で減量もしくは中止するのが一般的です。ステロイドは、少量であっても1ヶ月以上のんでいる場合には急にやめると体に異常があらわれることがあります。自己判断で休薬したり量を変えたりするのは危険です。主治医の先生とよく相談し、指示通りに服用してください。
抗リウマチ剤
抗リウマチ薬は免疫異常を調整し、関節の炎症やリウマチの活動性を抑制する薬です。治療効果には個人差があり効果が出るまでに平均2~3か月程度かかります。最大3か月使用にて効果なければ他剤への変更を考慮します。
  • メトトレキサート(MTX)
    骨破壊進行抑制効果、高い有効性が報告されており、リウマチ治療において最も基本となる重要な薬です。投与前にスクリーニング検査を行うことが必要であり、妊婦・授乳婦、悪性疾患、骨髄抑制、腎障害、活動性結核等を有する患者さんには使用できません。
  • サラゾスルファピリジン(SASP)
    比較的早期で軽症~中等症の患者さんに有用性があります。また副作用や合併症などによりメトトレキサートが使用できない患者さんにも第一選択薬となります。
  • ブシラミン(BUC)
    我が国で開発された抗リウマチ薬です。サラゾスルファピリジン同様、比較的早期で軽症~中等症の患者さんに有用性があります。
  • イグラチモド(IGU)
    日本で開発され、2012年に承認された薬です。サラゾスルファピリジンと同等の有効性を有します。ワルファリンとの併用で重篤な出血をきたす可能性があり、併用できません。
  • タクロリムス(TAC)
    これも日本で開発された免疫抑制薬です。臓器移植時の免疫抑制に対して使用されることがおおいですが、関節リウマチへの適応も認められています。
  • ミゾリビン(MZB)
    免疫抑制薬ですが、腎機能障害や間質性肺炎があり、メトトレキサートを使用できない患者さんにおいても使用することができます。
生物学的製剤
上記の薬剤で充分な効果が得られないような難治性の関節リウマチに対する治療のひとつとして使用されます。期生物学的製剤とは、生物から産生される蛋白質を応用して作られた治療薬の総称です。関節リウマチのため炎症を起こしている滑膜では、痛みや、腫れ、体のだるさなどの症状を引き起こすサイトカインと呼ばれる物質が増えていることがわかっています。これらのサイトカインは関節破壊や骨変化を進行させる要因ともなります。これらサイトカインの働きや、それを産生する細胞の働きを抑える生物学的製剤が開発されたのです。生物学的製剤には、3種類の標的分子(TNF、IL-6、T細胞)があり、現在日本で使用可能な生物学的製剤は9種類 (レミケード、エンブレル、ヒュミラ、シムジア、シンポニー、ナノゾラ、アクテムラ、ケブザラ、オレンシア) あり、それぞれの特徴によりどの薬剤を選択するかを決めます。いずれの薬剤も関節炎および、関節破壊を抑制するという高い効果を発揮します。寛解の状態が続いた患者さんの中で、投薬を中止しても寛解を維持することができる方もいます。また近年では一部薬剤の後発医薬品(バイオシミラー)が発売され、安価で治療を受けることもできるようになりました。有効性安全性は同様という報告が多いです。
新規分子標的治療薬(JAK阻害薬)
サイトカインの細胞内シグナル伝達に重要な役割を果たすJAKと呼ばれるキナーゼ蛋白を標的とした低分子化合物です。2013年に関節リウマチに対する新規の分子標的治療薬として、トファシチニブ(ゼルヤンツ)本邦で承認されました。生物学的製剤と同等の効果を経口薬剤として生物学的製剤と同等の効果が報告さえれています。その後、バリシチニブ(オルミエント)、ペフィシチニブ(スマイラフ)、ウパダシチニブ(リンヴォック)、フィルゴチニブ(ジセレカ)が承認され、現在、関節リウマチに対して5剤使用が可能になっています。JAK阻害薬使用者では、帯状疱疹の発症率が上がること、悪性腫瘍や血栓症に注意が必要であることが報告されています。

手術療法

関節リウマチの治療でも、特に病期の進んだ患者さんに対する治療として手術療法は大変重要です。破壊され変形の進んだ関節は、薬で修復することはできません。破壊や変形によりはたらきが悪くなり、日常生活に不自由をきたした関節に対し、手術療法は関節のはたらきをある程度回復させたり、痛みを取り除いたりすることができます。

おもな手術療法には、

  1. 滑膜切除術
  2. 人工関節置換術
  3. 関節形成術
  4. 関節固定術
  5. その他 腱形成術や頚椎手術

があります。

滑膜切除術
腫れている滑膜を取り除く手術で、痛みをとり進行を抑える目的で行われます。関節リウマチの関節炎は滑膜の炎症であることから、熱い戦場を一つ取り除くという意味があります。この手術は薬物治療の効果が不十分な、活動性の強い関節で、しかも変形や破壊が進んでいない関節に対して行われます。主に膝、肘、手首、手指などの関節に対して行われます。
人工関節置換術
破壊された骨や軟骨の一部をとって人工関節を入れ関節の機能を取り戻す目的で行われます。膝や股関節の人工関節置換術は手術成績がよく、現在リウマチ患者さんに対してよく行われています。その他、足首、肘、肩、指にも行われます。
関節形成術
骨の一部を削るなどにより変形を修復する手術で、肘、手関節、前足部などに対して行われます。変形をなおし、痛みを除くことが目的で、ある程度の機能回復も期待できます。
関節固定術
関節を動かないように固定する手術で、痛みを除き、支持性を得る(ぐらぐらしないようにする)目的で行われます。その関節の痛みをとるという目的では確実な手術ですが、その関節は全く動かなくなるので、固まって動かなくなってもそれほど不便のない関節に対して行われます。足首、手首、指が対象となります。
その他
リウマチの滑膜炎により手指の腱が切れることがあり、腱の手術が必要となることがあります。また、リウマチの炎症は首の骨をおかすこともあり、ときに手術が必要になることもあります。

手術はタイミングがとても重要で、せっかく手術で関節をなおしても、長い間の関節炎により周りの筋肉が弱りきって動かすことができなければ使うことができませんし、周りの骨が弱ってしまっていれば、関節を急に動かせるようになることによって弱った骨が折れることもあります。また、手術のあとのリハビリテーションもとても大切です。リハビリテーションが十分にできなければ、関節のはたらきは十分に回復できない場合もあります。

日常生活のポイント

安静と運動について

関節リウマチの患者さんの日常生活では適度の安静と適度の運動が必要です。適度の安静がとれると、全身の状態はよくなり、関節の痛みも楽になります。しかし、関節を動かさないで安静にしてばかりいると、関節が固くなり、また関節を動かす筋肉も衰えます。そこで毎日の適度の運動が必要になります。痛みが少なく動きやすい時間帯に、ゆっくり関節を動かしたり、筋力維持訓練を中心に行うのがよいと思います。運動量は翌日に疲れや痛みを残さない程度というのが目安になります。当院外来受診時にご希望の方にリウマチテキストをお渡ししていますが、リウマチ体操の方法なども載せてありますので参考にしてください。温水プールでの全身運動は、陸上での運動に比べて関節への負担が少なく、継続的に行えば筋力をつけることができますので、多くの関節リウマチ患者さんにとって理想的な運動といえるでしょう。始められるときには主治医の先生と相談して、プールにはいって運動しても良い状態かどうか、お聞きになってからはじめてください。

関節保護動作について

関節に負担をかけることと、適度の運動をすることは全く別の事です。たとえば、手首に痛みがあるのに、固いびんのふたを不用意にひねりあけたり、重たいものを片手でさっと持ち上げたりしていませんか? 関節に無理な力をかけることは関節炎を悪くすることになります。手首に痛みがある場合はびんのふたをあける道具を使ったり、ものを持ち上げるときには両腕全体でかかえるようにするなど、関節リウマチの状態にあわせて生活の工夫することが必要です。必要に応じて自助具や装具、杖を利用しましょう。また体重をコントロールする(太り過ぎない)ことも大切です。